少女飛遊
日雇いくん◆hiyatQ6h0c

 まだ暗いうちにふと目を覚ますと枕元に少女がいた。眼を見開いて私の顔を粘っこく見ていた。しかし熱のこもった眼ではなく、私を通してはるか向こうを見ているような、澄んではいるが遠い眼だった。少女は16、7ぐらいの年齢のような、大人の女性になりかかっていると見受けられる体つきで、背中の中程まで伸びたまっすぐで艶やかな髪をしている。一見、凛とした顔立ちの表情のどこかに、訝しげな光を放っているかのような感触を覚えずにはいられなかった。
「誰だ。何故ここにいる」
 私の問いかけには無視を決め込んだように、少女は通学用と思しき制服をヒラリと脱いで一糸まとわぬ格好になると、布団に手を突っ込んで私の手をグイと力を込めて取ってきた。思わぬ行動に一度はその手を振り払うが、今度はもう片方の手で絡め取ろうとする。
「……おい!」
 不気味な少女の行動に声を荒げ、布団をはいですぐさま起き上がろうとした。しかし上半身が自由に動かせるのにもかかわらず、下半身が重石のように頑として動かなかった。少女の執拗な攻撃をかわしつつ空いていた手で太ももをまさぐってみると感触があった。不随ではないという事が分かる。とするとこれは一体どうした事か。私は次々と起こる訳のわからない事例に心が激しく乱されてしまい、やがて少女に振りほどけない程の力で片手を完璧に捉まれてしまった。
「……!」
 そして少女は私の手を自身の股間に持っていってから、そのまま秘部らしき箇所へぬるりとあっけないくらいに入れていった。結合部分が暗くてよく見えなかった分、ゼリー状の感触が強く肌に生ぬるく伝わってくる。驚きのあまり声も出なくなった私をよそに、少女はなおも執拗に深く入れていった。
 瞬く間に肩のあたりまで腕が入ると、次に少女は秘部を急速に拡大して、足の先から体全体まですっぽりと包み込んできた。その時には下半身は元より、上半身も動かせなくなっていた。すっかり少女のなすがままだった。丁寧な様子で包み込み終わると、首だけを外に出した状態で私はすっかり少女の一部と化してしまった。やがて体中が程よく暖かくなり、温泉に入ったかのような心地になってきて、心が弾け飛ぶように驚いていたのが、ウソのように解れてくるのがわかった。我ながら不思議だった。
 と、今度は少女が体を折り曲げてその顔を私の顔に近づけると、端正だった表情を大きく崩しながら顎が外れんばかりに口を開けた。そして私の首までを流れるように飲み込んだ。口中は生臭く狭かったので、息がすぐに苦しくなってきたが、少しすると、少女の後頭部から穴があいて顔が出せるようになった。自然と外の風景も見えて息が出来るようになる。が、それもつかの間、体中が跳ねるような衝撃に襲われると、部屋の風景が物凄い速度で視界から離れた。それからすぐに後方で激しい衝撃と爆音を感じると、穴のあいた自宅らしい屋根がすぐに見え、そして小さくなっていった。
 空中に飛び出した私と少女の合体物は、やがて雲を突き抜け地球を離れて、気がつくとどこの宇宙空間を飛んでいるのかわからないくらいの距離を彷徨うようになった。不思議な事に地球上での状態を保ったまま、死にもせずに飛びつづけていた。
 私は成すすべもないまま少女に向かって、しょうがないから少しはましなところに連れてってくれよ、と呟くのみだった。



散文(批評随筆小説等) 少女飛遊 Copyright 日雇いくん◆hiyatQ6h0c 2005-10-24 23:10:00
notebook Home 戻る