落日セブンスター
大覚アキラ

この季節は
いつもからっぽだ
おまえがいなくなってから
からっぽになってしまったんだよ

今日みたいに
よく晴れた秋の日の夕方
公園のベンチで
ぼんやり吸う煙草は
すこしだけ
冬の匂いがするんだ

そして
おれはおまえのことを
また思い出してしまう

おまえの好きだった
セブンスター
おまえの好きだった
冬の匂いの煙草だよ

なあ
おまえもそこに座って
一本吸っていけよ
別に用事なんかないだろう
時間なんていくらでもあるさ
せめて
煙草一本吸うあいだ
おれとちょっと話をしようぜ

ついこのあいだまで
真夏だったのに
先週デパートに行ったら
もうクリスマスツリー売ってたんだよ
なんだかおかしくって笑ったよ

そうやって季節の流れは
人為的にどんどん加速していって
たぶん10年ぐらい先には
正月が明けると
クリスマスの準備をするようになる
ばかばかしいけど素敵だ
一年中がクリスマスだよ

一年中がクリスマスになったらいいな
そしたら
おまえがこの世界から消えた
このからっぽの季節も
華やかなイルミネーションと
賑やかなクリスマスソングに飾られて
すこしは楽しい気分になるだろう

だからおれは
今夜帰ったらさっそく
クリスマスツリーの飾りつけをするよ
ツリーのてっぺんには
星を7つ付けるのさ
どうだい
なかなかいいアイディアだろう

さて
煙草も短くなったし
そろそろお別れだ
また近いうちにツリーを見に来いよ
じゃあな

メリークリスマス




自由詩 落日セブンスター Copyright 大覚アキラ 2005-10-19 17:46:11
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