星空の宛先
たりぽん(大理 奔)

メールでは返信を促しているようで
そんなことを期待しない今日の私は
便箋に走らせてみようと思うのです


書き出しは、季節のことや天気のこと
やわらかに二人がつながっている
なんてことを平凡に匂わせて


つぎに、あなたの体調を心配してみたりする
わたしも元気をよそおったりして
たぶん、気にもとめてくれないだろうけど


それから、近況なんかをちょっと大げさに
あなたが嫉妬するような楽しい話題をさがして
その想い出の中にあなたが足りないなんて匂わせて


さいごに、やっぱり淋しいって書いておく
わたしのほんとの気持ちはよそおえないから
たぶん、気にもとめてくれないだろうけど


封筒にいれて、封をする
ちょっとかわいげなシールでも貼ってみようか
そして、しっかり宛名を書くのだけれど


あなたはいま
どのあたりにいるのでしょう
宛先が書けないのです


サヨナラとも、行ってきますとも言わず
たち昇っていってしまった空
その星空の


宛先が書けないのです




自由詩 星空の宛先 Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-10-10 22:58:59
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