小詩集「書置き」(十一〜二十)
たもつ
人の嘘で
鳥は空を飛ぶ
鳥の嘘で
ドアは人を
閉じ込める
ドアの中で
人は鳥を
飛ばし続ける
+
いつも
三人なのに
いつも
八等分
してしまう
+
叩く
ただひたすらに
叩き続ける
それを何かの確認だと
思うことなく
+
指先から
枯れた草の匂いがする
帰って来ないあの人の指先も
同じ匂いがした
他に何も似てないのが
おかしいくらいに
+
あのきれいな色の
ジュースを飲めば
きれいになれる
かもしれないのに
必ず十円が足りない
+
紙に知らない人の
名前を書いてる
多分それは
知らない人の
名前だったと思う
+
機械を拾いに
広場に行く
思ったより落ちていたのは
機械化が進んいるからだろう
持ち帰り
きれいに一つ一つ磨いて
きれいに庭に埋めていく
+
廊下に長い影
長く伸びすぎて
壁に折れる
蹴ったボール
その向こう
窓からは
雑木林が見える
+
母がブランコをしている
少し離れて
妹が泣いている
母をしまう
妹はブランコに駆け寄り
落ちていた人形を拾って
嬉しそうに笑う
+
いつのころからか
雨のように鳴く虫が
目の中に住み着いてる
涙を餌にしているようで
最近すっかり
涙が零れなくなった
人でなし、と
散々罵られる
雨の音は
きみには聞こえないらしい