片糸でんわ
たりぽん(大理 奔)

砂時計が流すことのない一粒の砂
悲しみを知るか

桜を手折る時、残された枝の揺らぎ
寂しさを知るか

発電と称して進むことのないプロペラの空回り
孤独を知るか

鍛えられていく鉄塊の叫ぶ雷のような火花
激情を知るか


ああ、またそうやって自分の感情を
万華鏡にほうりこんでは
あまりの美しさに畏怖し
虚ろさに恐怖する君よ

電信柱に引っかかる月明かりの下で
うつむき吐き出す
生きるための異物




今宵
片方だけの糸でんわ
風に糸を遠くとおくに流して
耳を添えてみる

聞こえてくるだろう、鼓動と息づかい
ごうっという風の音に君の命


帰る場所を知る

還る場所を知る



自由詩 片糸でんわ Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-09-29 17:23:10
notebook Home 戻る  過去 未来