眠ってしまえばいい
たりぽん(大理 奔)

湿気ばかり多くて
気温が上がらない夜は虫なんかの
季節を送る歌など気にせずに
眠ってしまえばいい

閉じた瞼の裏が
奇妙な色に透けるのは
まだ生きている証だと思えるのなら
眠ってしまえばいい

肌の触れあう弾力や
握った手の汗ばむ不快さを
何かとつながっている手応えだと思えるなら
眠ってしまえばいい

救えなかった言葉や
逆撫でるようにギターでがなる声が
不意に胸に迫ったなら
眠ってしまえばいい

性交とか愛撫する行為が
神聖なるラヴとかお笑いだ
それが愛する意志と同じだとつぶやくなら
眠ってしまえばいい

生きるということがどこかで
必ず死、何かの死と切り離せないのに
繋いだ手にかいたあの汗のような言葉が
危うく関係を絶とうとする

言葉が信じられないからといって
体を交えるわけではなく
今に残す存在の理由を
誰もが求める理の時間

血を見なければ信じられない生など
ただの物質的な信仰心で
誰かを傷つけたときに流れる涙が
胸に流れるいのち

流脈はコトリコトリと
時計のない太古から
水の流れを刻んでいるので






すべての時計の同期する夢を見ながら
眠ってしまえばいい

こんな夜は、歯を食いしばって
眠ってしまえばいい


自由詩 眠ってしまえばいい Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-09-19 22:32:54
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