最終バスの途中
たりぽん(大理 奔)

最終バスは一番後ろの席に座るのです
何となくそれが習性になっているのは
そこからは町の様子がよく見渡せるからです

蒼い街灯の下でたたずんでいる
停車場の表示を運転手は調子よく
鼻歌まじりに通過していきます

私のむかう停車場はどこだったかと
降車ボタンをぼんやりとながめます
だれかが目的地に着くと
場末のイルミネーションみたいに
紫色できれいです

毎日の日課を記した時刻表を
またひとつ通り過ぎます、通り過ぎます
座席の窓は合わせ鏡の暗闇に
亡霊のように風景を流すので
私には映る理由がないように思いました

だから、降車ボタンを押しました
自爆スイッチのように思い切って押しました
不意に時刻表が気になりました
バスはふり返りもせず走り去っていきます

ニュータウンの停車場の看板には
夢のような場所の名前が書いてはありましたが

時刻表には数字が並んでいるだけで
どんな生き方をすればいいのか
行き先は、記されてはいませんでした



わかっていたのは
もうバスは来ない
ということだけでした




自由詩 最終バスの途中 Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-09-18 19:54:10
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