くちびる
dendrocacalia

こののっぺりとした皮膚の
まあるく空いた黒い空間は
だまってゆっくりあなたを吸い込んで
肺にとどめて気持ちよくなるはずだった

もったいぶって持ってかえって
夜のベランダの下や
明け方のベンチで
1mmほど銀紙をずらして
ちょっとずつ愛したい
舐めたり、吸い付いたり、優しく噛み付いたり、
他にも素敵なことがたくさんある

でもね
間違えて
彼女に会いにいきなよ
といった。

うれしくも無いのに微笑んだら
ただの唇がそこに落ちた。




自由詩 くちびる Copyright dendrocacalia 2003-12-30 12:21:25
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