スキップ
大覚アキラ
スキップなんて 最低だ
オルガンにあわせて 旋廻する幼稚園児の渦の中で
5歳のぼくは つまらなそうに歩いていた
ハイげんきよくー アキラくんもホラ スキップ スキップー
美意識 と呼ぶにはあまりにも幼く
だがしかし 強靭な意志で
ぼくは 頑なにスキップすることを拒否した
はーい みんなストップ ストップー
下手糞なオルガンのメロディが止まり
いつもはやさしい京子センセイが
笑っていない眼で ぼくを見る
アキラくんは どうしたのかなー スキップ できないのかなー
ぼくは首を左右に振る
できるに決まってんだろ スキップぐらい
できるけど やりたくない やりたくないから やらない
はーい じゃあ もういっかい みんなでスキップねー
下手糞なオルガンのメロディ再び
それにあわせて ただ 盲目的に 笑みを浮かべて
旋廻し続ける幼稚園児たち その渦の中をぼくは 歩く
ストップー みんなストップー アキラくん あのねー
嫌な 苦い 熱い 沈黙
それを突き破って 響く チャイム
拷問の時間は これにて終了
まったくもー こんどはアキラくんも ちゃんとスキップするのよー
そして ぼくは
運動場に向かって 教室を飛び出した
弾むように 軽やかな スキップで
自由詩
スキップ
Copyright
大覚アキラ
2005-09-08 17:03:01