とかげ
umineko

それは
とても暑い夏の夕暮れ
お城のそばの遊歩道
ほくほくと散歩するボクら

明日
泳ぎにいこっか
いいねー
他愛ない会話

とかげ!

突然
石垣の隙間から
飛び出した白い四つ足

まるで誘うかのように
君の運動靴の
隣をすりぬける

踏むなよー
ボクの気抜けた声も
どこかで
油断していたかもしれない

とかげは
追いすがる君など相手にせずに
右に左に自在に走る
そうして
石垣の反対側へ
車道へ

あっ

たちまちに
とかげは道の真ん中に
おりしも発車したバスが
ライトを揺らして突進

やりすごす
タイヤの間で
一台、二台

ボクらは
そこから動けない

三台、四台
そう
そのまま
その場所で
がんばれ!
   

  ぱちっ

 と
   何か が
はじけ る
 音 が

時間 は
  そのま ま
 止まった 
     ま まで

  クラ クション だけ
夜 に 
    響い た
   

それからボクらは
だまったままで
もと来た道を引き返し

うつむいたまま
部屋に帰って

背中を向けて眠ったんだ
 
 
 

  



自由詩 とかげ Copyright umineko 2005-09-01 02:54:32
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