さかなゆめ
umineko

昔。高校生の頃だけど、「一番星」って作品を書いたことがある。これは歌詞なので、まあ歌えちゃったりするんですけどね。

  *  *  *  *  *  *  *  *  * 

   一番星見つけて 何が面白い
   一番明るい星が もてはやされるだけ

   光るにも弱すぎる 名もない小さな星なんて
   涙さえ流せない さみしくて

   一番明るい星に 心惹かれるのね
   明るい人のほうが 愛されるように

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まあこんな感じ。うひゃー若い(笑)。

自分はずっと知らなかったんだけど、実は一番星って多くの場合、金星なんだって。それを聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのが、この作品だった。もう設定からして間違ってるんだよね。一番星は輝いてなんかいなかった。ただ反射してただけなんだ。

あの頃の私は、レンアイの図式がさっぱりわからなかった。快活な友人がなんとなく前向きにレンアイをしてる、そんな気がしてた。事実、私の好きだった人(まあ色恋と呼べるものではぜんぜんないのだが、それはそれ)はことごとく私の友人を選んでいった。私はずいぶん長いこと、平気なふりを続けていた。「ぜーんぜん、大丈夫。」そんな台詞幾度繰り返したことか。はは。

ただそれに呼応するように、その頃の作品はどよーんと暗い。実は捨てられずにずっと机の引出しに入っていて、今もこうして読み返すことが出来るのだけど、ともかく暗い。ありがちなダダイズムっちゃーそうなんだろうけど、ま、一介の高校生としてはきわめて健全、といえなくもない。

だけど、今ならその意味がわかる。私はその頃、レンアイをよく知らなかった。誤解していたのだ。レンアイは楽しくて華やかで心沸き立つものなンだろう、と。だからそれを手にしていないことが、敗北だと思っていたのだ。

私は今も詩を書いている。レンアイの詩も、しつっこく書いている。ただ、横たわるものがなんだか違う気がするんですね。

喪失。

レンアイは成就ではない。喪失の連続だ。どうして気付いてしまったんだろう。夢を見ていた方がシアワセだった、かな。

かつて魚たちは陸をめざしていた。うろこを皮膚に変え、えらの代わりに肺をあてがい、乾きながらとまどいながら、それでも緑の森をめざしたのだ。そう、私があの日、恋という幻想にあこがれていたように。

あなたを想うとき。私の中のえら呼吸が目を覚ます。
息が出来ないのはたぶん。そのため。
  

  


散文(批評随筆小説等) さかなゆめ Copyright umineko 2005-08-14 11:41:29
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