そっくりな
アンテ


いれものが
ふたつありました
ふたごのようにそっくりでした
どろみずをひとばんためておくと
いっぽうはどくみずに
もういっぽうはのみみずになりました
のみみずは
ひとびとののどをうるおし
どくみずは
ひがわりのとうばんが
やまのむこうまではこんですてました
みずをためてみなければ
どちらがのみみずになるのか
わからなかったので
いれもののかたほうをすてるわけにもいかず
どくみずだけが
せっせとすてられて
どこかへながれていきました
ときどきは
ひとびとはつどい
ほかにのみみずをえるてだてがないか
はなしあいました
けれどよいちえはうかばず
かならずさいごは
いのちにはかえがたい
ということになりました
そうして
くるひもくるひも
せっせとのみみずをのみほし
くるひもくるひも
せっせとどくみずをすてました
そのときだけ
もうしわけなさそうに
かおをそむけて
やまのむこうにすてました



                          「そ」
                     あいまいなきもち



自由詩 そっくりな Copyright アンテ 2005-08-04 21:52:14
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あいまいなきもち