実験
大覚アキラ

炎は水平に走る
午後の郵便物は垂直に落ちていく
右の翼が少し小さい奇形の鳩は斜め四十五度に飛んでいく

それを
観測者は地球上の任意の点Aに立って
ずっと観測し続けている

月をほんの少しだけ地球から遠ざけてみる
すると地球の自転は少しだけ緩慢になる

観測者は任意の点Aから弾き飛ばされて
優雅な放物線を描きながら離陸していき
やがて永遠の周回軌道に乗る

あいかわらず
炎は水平に走り
午後の郵便物は垂直に落ちていき
右の翼が少し小さい奇形の鳩は斜め四十五度に飛んでいく

観測者不在のまま
退屈な実験は続く


自由詩 実験 Copyright 大覚アキラ 2005-08-03 15:56:10
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