インドの魔術師
狸亭
インドの魔術師から花束をもらった夜
ぼくはなぜか平安時代の日本にいる
うらわかい細身の美女にかこまれて
宴はすでにはじまっていて
ひとりの女をだきしめながら
官能がたかまりおもわず腕に力
女はうらみがましい眼をおおきくみひらき
ぼくをみつめて白い顔に妖気
腕の中に女の肉は崩れはじめる
足元には贅沢な花柄の色彩ゆたかな衣装だけがのこる
一瞬にして一〇〇〇年の時をよみがえらせた罪か
その下に腐乱死体がのぞいたのは確か
森のむこうから人煙がたちのぼるデリーの朝
靄の中に鳥たちが舞いはじめたのさ
枕元に魔術師の花束がつよい匂いをはなっている。
(押韻定型詩の試み 9 ー既出作品改稿版―)