インドの魔術師
狸亭

インドの魔術師から花束をもらった夜
ぼくはなぜか平安時代の日本にいる
うらわかい細身の美女にかこまれて   

宴はすでにはじまっていて
ひとりの女をだきしめながら
官能がたかまりおもわず腕に力

女はうらみがましい眼をおおきくみひらき
ぼくをみつめて白い顔に妖気
腕の中に女の肉は崩れはじめる

足元には贅沢な花柄の色彩ゆたかな衣装だけがのこる
一瞬にして一〇〇〇年の時をよみがえらせた罪か 
その下に腐乱死体がのぞいたのは確か

森のむこうから人煙がたちのぼるデリーの朝
靄の中に鳥たちが舞いはじめたのさ
枕元に魔術師の花束がつよい匂いをはなっている。    

 (押韻定型詩の試み 9 ー既出作品改稿版―)


自由詩 インドの魔術師 Copyright 狸亭 2003-12-16 09:02:26
notebook Home 戻る