君と僕vs全世界
ヤギ
「帰ろっか」
「ういーーっす」
来るときには僕がこいできましたが
帰りは彼がこぎました
もう日が射していました
僕たちと自転車は塩水にぐっしょりぬれていたものですから
図らずもきらきらと輝いていたのです
頭の中では穏やかな曲が流れていました
アコースティックギターのリフレインです
冷えたままの彼の体は昨日よりもまた少し欠けています
彼の妹はさようならといって
馬(!)と一緒にどこかへ行きました
それでも帰ろうと思えたのは
死んだ理由を探すと言いながら
毎日ぼさっと過ごしている彼のおかげでしょう
だれもいない国道で
僕たちは自転車に乗っていました