隣人計画 3
英水

 私の部屋を嵐が行過ぎた
 隣人の部屋に避難する

隣人の部屋
 
 廊下には、泥水をかぶって、折れた枝
 幾重にも髪がからまり、とぐろぐろと黒い

雪が降り出した
雪は圧縮すると燃える
そして、心に生えた傷をゆっくりと焼く

雪でカバンを作り、背負って行く

 水の鳴き声が聞こえる
 隣人の部屋が浸水するのも時間の問題かもしれない

雪を燃やす
チーズフォンドュを暖めながら、
テレビの下に積もっている記憶などについて語り明かす
しばしの休息

 上空には低気圧の稜線がたなびいている

明日出勤するまでには、全てをやり直さなければいけない
隣人は、ひとしきりの微笑みの後、
キッチンのカウチで寝息を立てている

 その頬に口付けし、私は隣人との距離を測定した


自由詩 隣人計画 3 Copyright 英水 2005-07-20 04:26:11
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