夜のけだもの
木立 悟


ひとりひとりの背に棲むものが
夜更けに互いを呼びあっている
見えないものの通り道に立ち
腕をひろげ 聴いている
夜の光の下 揺るぎないもの
幾つもの影のなか 
ひとりきりのもの



原でもなく野でもない
二つに分かれた草地の間に
のたうちながらおまえは生まれた
放り出され 声もなくころがるおまえの上で
ただ月だけが吠えていた
既に亡い多くの緑たちに
おまえの誕生を告げていた



まっすぐな夜を曲げては光る
はばたく手足 おまえの負の影
人知れず哭く おまえの尾の星
月が無言で白みゆくとき
町のすべての曲がり角に
横たわり 立ち上がり 
消えてゆく





自由詩 夜のけだもの Copyright 木立 悟 2003-12-07 22:25:12
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