それぞれの日時計
望月 ゆき

窓枠の内側だけがすべてなら世界も朝もはねかえすのに


目をとじたままたしかめる左側まだだいじょうぶ黎明の時


暁の別れとともにおとずれるコーヒー2杯の蒸気する朝


ペダル踏むかかとに隠す「すぐ会いたい」坂道の加速ではじけとぶ


コピー機の前ですぎてく昼下がりホチキスできみとぼくをとめたい


咲きほこるケシに囲まれキスをする白昼夢だと知ってか知らずか


影のびてほんのひととき世界での存在感さえ錯覚する午後


夕さりにブランコゆらし影だけが重なる1秒いとおしむきみ


左から右へと流れるなにもかも制止する癖抜けぬ夕暮れ


「帰りたくない」とつぶやく宵の口聞こえないふりを見ないふりする


夜の帳がおりてきてきみさえも隠してとおりすぎてく足音


さようならだけを残して終電車見送る月の冴え冴えなる空


真夜中に泳ぐ海なら境界線越えて夜空につづくクロール


終着点たどりつくたび過去になり永遠の意味を少し知る夜


ガラス窓うめつくす朝焼けの底ねぼけまなこで浮上するきみ



短歌 それぞれの日時計 Copyright 望月 ゆき 2005-06-06 02:00:09
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