麦わら赤毛と虫眼鏡
あおば


赤毛のアンが
最上段を占拠する
姉の本棚

なんか短歌じみた書き出しだねと
老母が笑う

子供の頃
映画女優のようにその名を
アンの名を親しげに聞かされていたから
実在の人物のように感じていた

思い切って一冊
手に取ってみれば
アンの正体が分かる
そう思っても
女子トイレをのぞき見るような
罪悪感が漂って
とうとう手に取ることはなかった

麦わら帽子を被ったアンは
新聞を読みながら
虫眼鏡を手に取って
シニカルな笑みを漏らす
見てはいけないものを
とうとう見たなと言うように
上目遣いでこちらを見るのは
座敷童のようにおとなしい
気配だけの母ではなくて
母も縋った常緑樹
モンゴメリーの赤毛のアンです





---------------------------------
タイトルは、奇天烈デモクラシーより


未詩・独白 麦わら赤毛と虫眼鏡 Copyright あおば 2005-06-05 05:29:31
notebook Home 戻る  過去 未来