祈鳴
あらい
すべては、かつてない
トビラへは いかない。
自らの手で知らない儘に
しじまで。ぐしゃぐしゃで、
とんでもなく まっすぐだ。
金糸のすきまから
さかしまに喚く夜霧は
しずかに
しづかに
生ぬるく蛍光する律が
陽だまりへ引きずって
壊れてたんだろ
硝子の鉛芯が香った気がした
みみずくの血を喰み砕かれ
たびに なげだされる
ここは衰弱――
"誰かのはなし"の熱をくぐもらせた指先で
泥を濡らしていた。線に
かじかんだ影の、そのころ
爪痕を残すような、ノイズの
かげろうの胸に、追い越してく。
熱帯魚はもたもた ふるえながら
弓のようにぬらぬら つるされては
波だつ耳を塞いだ烏が裏地を掻い潜る
"みちづれ"を押し流してゆくしかなかった
――そこは胎動
すくいあげる手順は、いまだ
一度も息をしたことがないことに
そうか。産声よりもあさいチケットは
ほのくれないに閉じたつばさに
わずらいてから孕みおとす
黒曜の舌を撫で
火傷すら忘れて
真昼に死んだ雨のピクセル
うろたえながら、こぼし、
乾かし 拾いあげ、
ひとり、
ひとつ、
ひとかたまりの檻を超えた。
うみねこ。鼻梁がツンとうずき
まなざしは一閃、こだましている
肺のうらで くくっといたんだ
煤色の朝をかじり、
やみくもに。
やみくもに。
やみくもに。
踏み抜きながら、
ふきあがる蔦の
(しろがねの、翠の
「わたしは見なかった!」
しらない!
(声のない、
匙をまきちらす
『蒼い』
くちを縫われ、
わたしは還ってきた
わらうでもなく。
いのるでもなく。
ぬぐわれるようにいきわたり、
ふいにたつように
根を下す。