杞憂
黒川排除 (oldsoup)

供養の途中で 焦点の合わぬ眼球の底から 更なる深みへ静かに それは石段の香り 冷たく流れる幽霊の 砂が塗り込められた手すりを伝って あるいはそれは灰 前は生きていた生物の 一欠片の骨をみんな持ち寄って 広場に尖った草だけが その真ん中で 行われた焚き火の 白黒の帯めいた 煙の上っていく方向 見上げてみれば空 模様は夥しく 辺り一面に 遺影の黒い枠一杯に 踏みつけた石の色を 湿った手のひらでなぞって それが女の顔であると 笑みの狡猾らしく また抜け目ないさまは 闇の奥から吹いて 呼吸を免れ 霧に馴染んだ体の一部を 最初から話を始めるべく 求めさまよう空間の広がり 好ましくない微動へと だが確かに 伏し目がちの頭数へ 次の順番を探っているのは自分だけなのか

ただぼんやりと来たるべき時代について考えている


自由詩 杞憂 Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2003-12-01 02:20:05
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