ひそやかに
竹節一二三

ゆびさきを闇にひたして
子宮の中に帰ろうとこころみる
背の高いくすのきがわらい
絡まる根でわたしをとらえた

蝉のねごとが聞こえる
綿毛のくしゃみが聞こえる
トマトの放出する酸素が見える
切り株はなみだをながし
茅をひけば血が流れる

胎のなかはひどくあたたかく
赤い闇がわたしをみだす
ひそやかに ひそやかに
足をのばせばへそにぶつかる

とくとくと何かが響き
目裏には赤がはじける
羊水にひたれば
なにもかもが
ひそやかに
 なる

おやすみなさい
くすのきの闇にひたり
わたしはまるまり目を閉じた
絡みつく根が
繭のように

ひそやかに


自由詩 ひそやかに Copyright 竹節一二三 2005-05-24 02:41:55
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