ソーニャとニーニャの天獄日記 第零話
アタマナクス
飽いていた。
「幸せと退屈は交互にやってくる。」
そう知っていたのだし、それを忘れないようにひらがな一文字づつ十九文字の間、確かに言葉にしているときは幸せだったが、またやってきた退屈は時間の区切りも線引きもないウロボロスの渦だった。
「どうしようもない。」
その八文字の間、楽になれると思えた。けれど冷たさは加速度を増して存在を暗いだけの結晶へと磨り減らしていった。最後まで隠していたせいで忘れてほったらかしにしてしまっていた命が軋んで火花が小さく散った。
「あ、痛い。」
ニーニャは訝しんだ。今までずっといつまでも痛いだけで、「あ、」の入る隙間なんて可能性があり得なかったから。
ニーニャは片瞼に細く突き刺さったダイヤモンドキャットの羽毛のようなズキズキを言葉にしようとしたら涙が地球の栓を抜いて全ての海が溢れ出した。
「会いたい。」
そこら中腸を咲かした魚がピクピクと香る新天町の六つ角のピクルスビルの二・五階から飛び出した荒くれ獅子のような四輪駆動車のサイドミラーの破損し続ける鏡面で無限回、ソーニャとニーニャは出会った。