涙色の声
秋葉竹


 

紫色の
声が出なくなったのは、

冷気に触れた安らかな眠り薬の価値を
あらためて知ってしまって苦しんで
その罰に身を委ねてしまいたくなった
あのとき突然に、だ。

胸の中央にぽっかりと拳大の穴があき。
僕はと云えばいっぴきの鯉が
餌を食べるときにパクパクする口みたいに
窒息しそうになりながら、
酸素やなんやかんやを吸い込む作業を行う。
だけの死んだ魚みたいな涙目で、

僕の家は、光に満ち満ちて、優しくて、
挽歌の光は、いつだって、明るさのなかに、
寂しさを湛えて、キラキラ、していた、

なにかと闘うのは好みじゃ無いな。
勝ちたい感情が芽生え無ければ良かったな。

そんな想い、振り返って歌を歌ってしまう

空蝉の鴉の鳴く早朝の人気の無い街の電柱の
光はもはや灯ることもなく、

むかしのことも知らされずに生きて
歌を歌ってしまったときの
声は
三原色の明確なシナプス経由の涙色。

それが終わりの道を
踏みはずしてしまった朝の
初めての正直な涙の出来上がり風景、か。









自由詩 涙色の声 Copyright 秋葉竹 2024-06-10 22:32:30
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