本能
岡部淳太郎

生きたい。生き残りたい。この宇宙のいのちの星に
一つのいのちとして生まれたからには、生まれ持っ
たこの本能を、せいいっぱい開放して謳歌したい。
だから俺は、自らをごまかさない。自分の欲求を恥
ずかしいとは思わない。俺は生きたい。生き残りた
い。死にたくなんてない。認められたい。褒められ
たい。賞讃されたい。抱きたい。やりたい。嘗め回
したい。入れたい。出したい。揉みたい。おまえを
めちゃくちゃにしたい。おまえにめちゃくちゃにさ
れたい。産みたい。生まれたい。孕ませたい。食べ
たい。飲みたい。吸いたい。寝たい。眠りたい。だ
らだら怠けていたい。俺の欲望、本能からのこれら
の声を、おまえに聞かせたい。そうして納得ずくの
上で、俺の汚い欲望を、おまえに受け入れさせてや
りたい。おまえの欲望も、俺は受け止めてやる。互
いに受け止め合った上で、おまえとともに堕落した
い。おまえは俺の終着駅だから、一緒に落ちて、汚
れてしまいたいのだ。いっぽうで俺は、けもののよ
うでありながら、見たいし聞きたいし、すべてを知
りたい知識欲を持つ。宇宙のすべてを学びたい、愛
したい。愛されたい。探求したい。すべてのいのち
と合一して、大きないのちそのもの、神のようなも
のになりたい。でも結局は、俺は俺自身になりたい
のだ。それが俺が生きる理由。俺は俺そのものとし
て生きていたい。それこそが俺の欲望。俺の本能。



(二〇二四年一月)


自由詩 本能 Copyright 岡部淳太郎 2024-06-06 16:28:11
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