デモ
藤原絵理子


夕暮れになると虫を求めて燕が飛び回る
蝙蝠の飛翔よりずっと気分がいい
燕はハレの礼服になれたけど
蝙蝠は傘にしかなれなかった


自分の大学がイスラエルの企業から恩恵を受けている
それが許せないのだそうだ
昔アマゾンプライムで観た映画の
学生たちが許せなかったものは何だったのか
忘れてしまったけど とりあえず
大義さえあれば人殺しだって許される
なんてことがあってはならないということなんだろう
けど歴史上の古文書は
それが人間なんだと語っている


どんなにつらくても5月には初夏の風が吹く
その爽やかさに涙も乾くよと歌う売れ線の唄の
歌詞を作った人は本気でそうは思っていない
涙が枯れ果てるなんてことは起こらないし
袖が涙でぐっしょりなんてありえない
おねしょじゃあるまいし
作品は手を離れたら一人歩きしますからね
なんて無責任なことを笑顔で話す
雑誌のインタビューだってけっこうな収入源だ


燕の鳴き声はかわいい
蝙蝠の鳴き声は
気味悪い超音波だから
誰にも聞こえない



自由詩 デモ Copyright 藤原絵理子 2024-06-06 00:03:48
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