(再) TND(テレビ野賀動画局)放送 彼岸の人と生きる 2019年7月オンデマンド版より
竜門勇気
「なるべくよ、まったく平らになった机にほら、こんなふうに血を落としてな」
-神鳴りした人は独特の口調でとうとうと私達に比向かいの説明を始めた
「鏡台をな、ヒノキでな、柱にしてな、部屋に結んで置くんのよ」
テロップ
膠原材料
鏡台:3柱
定盤:(私達に見えないもので良いが)現実に存在するもの。
机:加工してはいけない。敬ってもいけない。樹脂でも良い。
僧 :穢れていても構わない。盲であること。
芝桜:ひとつかみ。
斎庵:これまで誰も住まず、これからも住まないこと。樹脂でも良い。
御簾:何でも良いが、一度使う。
水 :地域で不浄とされているものでなければならず、再拝者は一度は飲んでいなければいけない。
再拝者資格
・亀に生まれたもの。
・上背高く、肘に2つ骨がある。
・地域で不浄とされているものでなければ、地域で不浄とされている水場で沐浴したものであること。
・神か、墳墓で生まれたものであること。
・馬に言葉を教わったもの。
「机の上の血をよ、あと一つであふれるだけ落としてよ、ほれさ、これでいい、」
「一晩置くのさ、だけ壊れんように斎庵にするのよ、地域のもんにたててもらいよ、」
「今よ、明けの6つな、おそいな、明日また声かけるえな、」
「はい、纏いました、戸あけまして、今生私は半に裂かれまして、報いがありました、因果万象は結ばれました、オンマジナイマシテ、マジナイハマジナイマスマジナイマス」
-神鳴りした人、冬島タナカさんは真言のような言葉を口にしたあと
その日は一切口を開かず庵をあとにした。
-翌日(日没後)連絡を受け撮影班が向かうと冬島さんはにこやかに我々を迎えてくれた。
「程よくよ、乾いたわね、もう御簾を捧ぐよ、みてよ、」
-飴色になった御簾を机に広げる
「これはね、照れるのね、恐れがあるし、羽のあるものだけえね、部屋も散らかるし、」
「はい、また纏いました、閉じました、柘植ではございません、ほうれ、今受け飯しますぞ、かしこんでするのぜ、誓文をするのぜ、」
-乾いた葉を御簾の上に撒いていく
「花は混ぜちゃよ、きらうがよ、もう、来とるものは神様でないよ、こっからは、恐れてもらうのよ、」
-表情が変わった。穏やかな笑顔とも取れる表情が変わった。
「万障、なにものと現して括いてございませ、ではなければ畏みて殺します。」
「殺します、殺します、畏み畏みまた申します。殺します、殺します、」
-御簾の下で何が起こっているがわからない。
-しかし、この下では何かが震えているのかもしれない。
-恐怖に
「2つあったよ、7つ来て5つがにげたよ、2つは間違いなく閉じたでよ、」
「2つは、手の内におるよ、傀儡よ、震える獣よ、」
-冬島さんの表情はまた、柔らかな笑顔に戻った。
「これでよ、私もここも大丈夫よ、生きとれるよ、」
「もしよ、閉じれず恐れず、手の内に入ったらよ、甲高う吠えて坊に刺してもらえよ、」
「放っておくとよ、更地になるど!ハハハ!」
-再拝人は初めて笑い声を上げた。
-農村には呪物が生きている。
-3年後の春、冬島さんの家を訪ねると、取り外されたドアの向こうの居間に、大きな樹木の根が転がっているだけだった。
-村人の誰も、冬島さんの行方は知らない。
-再拝者は消えた。
-きれいに切断された、とても立派な切り株を残して。
-2018年前回の取材より6年後
-1988年の5月、最後に我々が冬島さんの家を訪ねた3年後
-冬島さんが野賀動画局に訪れた
-冬島さんは受付の従業員にそわそわとしながらメモを渡し
-すぐにたちさった。
~しゅぶつがよ がにこると ておくれよ かんじおる ものもおれば
~むしがはいようと いうものもおるよ そうしたら やくめはおわりよ
~ながいすれよ なまつめはがれる だけよ それが しゅぶつよ くらよ
~むらにいきとった あれも いま どこにもおるよ
~あのきりのねをよ もってかえったものは おらんかよ
~あれもってかえれば どのよも じごくにできるよ
~どのいえも じごくのかまで にられるよ さわったものがおれば
~もうころしてやったほうがいいど じごくいきて しんでじごくにいくども
~いましんで じごくにいくども まだあわれあるよ
~あわれにおもうたら いんどうわたせ
~ようやらんなら ***** *** ****(住所)にふうしょで つかいをせえ
~あてが きちんと していやる
-***** *** ****(住所)は再拝者の家、切り株が残された冬島さんのかつての住所だった。
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