喪心
ホカチャン

ボクが今年の元旦に死んだ
数週間前から食欲がなくなっていた
それでもワイフとの散歩には行きたがった
隣の犬にワイフが一目惚れしてから
勤めで多忙な飼い主にかわって
毎日ワイフと散歩していた
地域の人たちからも
「あら、ボクちゃん」と声をかけられかわいがられていた
「ボクちゃんは何でもあたしの話を聞いてくれるのよ」
とワイフも喜んでいた
長いときにはあっちの家に寄りこっちの家に寄りして
二時間ばかりも帰って来ない日もあった
夏の暑いときにも冬の寒いときにも
毎日散歩して十年ばかりがたっていた
ボクが亡くなってワイフは体調を壊し散歩もしなくなった
毎朝夕寝室の遺影に向かって
「ボクちゃん お利口さん おはよう おやすみなさい」などと声をかけ
さびしさをまぎらわしている



自由詩 喪心 Copyright ホカチャン 2024-04-20 18:51:56
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