4月の街で
番田 


目に何も無かった日々が、桜の開花によって目覚めさせられたかのように思えた4月、僕は歩いていた。目黒川の周りを。僕に抱かせた期待と、絶望が、そこには思い出としてあった。しかし桜だけは鮮やかに今年も咲き誇っていた。僕の、フリマの段ボールをもらったコンビニも、まだ、そこにはあった。人の溢れrんばかりにやってくる道の中を僕も歩いていた。きっとこれは、僕にとっては映写されているフィルムと同じなのではないかと少し思った。その場面を切り取る時、腰掛けていたことのある石や、健康診断で入ったことのあるクリニックが、脳裏には、蘇った。花の影が差していた同じ春の日、同い年ぐらいの若者が横の方には座っていた。そして僕は今持っているカメラと同じカメラを持っていた。その時は、レンズにちょっとだけ、嫌なゴミが入っていたのだけれど。



散文(批評随筆小説等) 4月の街で Copyright 番田  2024-04-16 01:49:29
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