手紙
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貧しさは身に沁みついた癖で

お金で争うのは家族の宿命だ

母は父に任された金を自分に使った

兄弟も自分にとねだった


私は一人借金の残高を調べた

公立校に進学できたら

それで育てられた子供としての責任は

果たせる気がした


父は働いていたが

それだけだった、哲学がないというか

賃貸に傷を付けることを悪いと理解できないぐらい

頭が足りないままだった


私は死期を悟り、生前分与をした

大事なものから人に分けてあげた

生きて然るべきだとシステムが働くまで

病気を理由に短い人生の全部を人に譲った


人を憎んだ人の顛末を私は見ている

だから私のことを大事にしてくれたあなたに

できればあんまり人を憎んで欲しくない

本当の本当に人を憎んで欲しくない


具体的にどうなるかは母がよく語ってくれる

私は母程の語り部にはなれそうにないけれど

誰かを養うつもりなら覚えておいて欲しいんだ

不幸がどうやって始まって終わるのか


自由詩 手紙 Copyright 303.com 2024-04-04 07:36:09
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