虫籠
鳥星

ガラスの壁に、手が触れて、彼は見る、音もなく、蠢く、群衆を。一人一人に、足音はつかない。そうして、忙しなく、いつまでも、蠢いている。真昼の、静かな都会。鳥が、空を、飛んでいる、ような気がする。駅のホームに、彼は立つ。ドアが開く、彼は入る。乗客の、誰もが、目を閉じて、蝶のいる、虫籠を、抱き抱えている。彼は、そうして、音もなく、茫洋と、まどろんでいる。真昼の、静かな都会を、音のしない電車が、駆けている。


自由詩 虫籠 Copyright 鳥星 2024-03-21 08:25:46
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