あたりまえ
秋葉竹





 
夜は冷えます

太陽とおなじような
あたたかい光が
欲しくて

涙ながしただけで
瞳が綺麗になるだなんて
びっくりするほど
デタラメな綺麗事だね

でも夜は冷えるから

ただましろなふわりとした
毛糸のセーターを
静かな目をして見守りたいのです

ぜったいに
抱かれたくないって
あの日云ったあなたの声は
夢を
その前の日に
棄て去った
悲しみばかりが漂って
ゆらりゆらりと
白い影帽子を想い出させる
あの手まねきは
すこしだけ
こころを切るように
さみしかったね

夜は冷えます

離さないでくださいと
虹よりも美しい言葉を
僕に
ささやきかけてくれる
世界は
虚しい灰色の街にすぎないかも
でも
どんな風に仲良くしてきたか
それだけは
絶対に消えない甘美な光なのかもね

なにも怖くなかったのは
あの太陽みたいな
あたたかい光が
欲しいことが
正しいことだと
知っていたから

堕ちることさえ
怖くなかった
震えて待っていた
ただ夜が寒いから
なんどもなんども云うのです


夜は冷えます


冷えた雨が降り
世界のすべてを刺してしまった
なかで
あなただけが
あたたかいひとだと想ったのです

夜は冷えます

だから忘れることのない
想い出のうたを聴いて
あたたかいこころになりたいのです

そこには必ず
あたりまえに
あなたがいるのです








自由詩 あたりまえ Copyright 秋葉竹 2024-03-18 21:23:23
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