週明け
中田満帆


 シルヴィア・プラスの遺体写真を眺めながら昼餉を片づけていた
 ガス・オーブンに突っ込まれたかの女の上半身、
 死の直前に最高のユーモアを発揮したという、
 モリッシーの言葉を懐いだす
 おれにとっての『ベル・ジャー』はいまだ
 いまだ見えないままで

 遙か未来にあるだろう、展望だろうと希望だろうと、
 そんなものなんかハナから信じちゃいないおれだって、
 少なくともじぶんの死を観察し、批評するぐらいの場所と時間が欲しい
 だっておれ自身がおれの最高の観客だから
 汽笛の聞える丘でドアを施錠する

 意味論のながい道を逆走してここまでたどり着いた
 だれかがおれを見守ってくれていればいいとおもいながら
 そんな幻想を永久運動させながらたどり着いた
 なおもおれを孤独のうちに疎外する現在をあざけって、
 花の蘂のような心を鳥の姿に鋳造して来た

 なんだってこんなところに萩の花が
 それにいま時分にどうして配達人が
 おれはとまどってガス火を入れる
 大鍋で茹だる赤インゲンの匂い
 香辛料とトマトの赤い色
 いままさに始まった戦いを実況中継してくれる七人の花嫁を
 いまになって求めてやまないんだ。


自由詩 週明け Copyright 中田満帆 2024-03-11 12:18:57
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