月夜の町
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これは 旧い お話
あなたの目が まだ開いていなかった 昔の話
その頃 わたしたち 自分を悪魔だと思っていた
化け物だった 醜くて 死ぬべきだと信じていた
夜だけが わたしたちを 赦してくれた
だから この目は 朝の光を 見ることがなかった
夜は 優しかった 穏やかだった 静かだった
どんなにやかましく 騒いでも どこへも行かなかった
月と 星たちは いつも 祭りを開いていた
信じる神もいないまま 信じていた 神はどこかに いる
母さんは 美しいひとで いろんなことを 教わった
おばさんは 頭がよかったから どうしても 母さんを
わたしたちを 醜くて 汚いと罵る母さんたちを 赦せなかった
でも それが愛だったのかどうか いまだに分からない
夜の鐘は 遠くに響く 朝が来ると 打たれる
わたしたち 抱き合って 震えていた まるで わたしたち だから
美しい 母さんの 唯一の汚点 それは わたしたちだったんだと思う
母さんは わたしたちのために いろんな服を買い与えた
醜いから 汚いから
許せないから 赦せないから
そんなに 旧い服を 誰が着ようと思うのだろう
世界が 変わることを どうして これっぽっちも 考えられなかったのだろう
美しい 母さん
頭のよい おばさん
月夜に 鐘が鳴る わたしたちの耳にも 母さんたちの 耳にも
憎むことに 疲れたのよ そう言って笑う母さんは やっぱり 美しい
母さんの 唯一の 汚点 それは わたしたち
自由詩
月夜の町
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2024-03-10 21:16:04
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