春光
リリー

 白梅の散り初めし小道に
 空が
 あの冬の頃の
 遥かな厳しさをはなれて

 泉は薄青さをとり戻し
 ふつふつと 春に向かって駆け出している

 梅の林は
 香気を溢れさせ 溺れてすらいる
 けれども 今、
 春にむかっている私の 
 心弱さ
 何度となく思いめぐらす
 あなたを

 晴れ渡った夜空のある時には
 爽やかに明日を思うのに
 霧の立つ朝

 梅の林をめぐりながら
 見えぬ姿に とまどっている
 妖しい花のような
 あなたの鼓動へ

 この手を伸べてみる
 私という湿原は
 のどかさを知らず
 優しくも 美しくもない時を
 型造ってきた
 季節 が 
 いつの間にか 
 
 陽差しは もう春だった
 空も 
 もう春だったのだ
 

 
 
 
 
 
 
 


自由詩 春光 Copyright リリー 2024-03-05 11:36:30
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