夜に発光す
46U

夜行性の種族 夜に発光す
厚いカーテンの内側で太陽におびえる彼らのことだ
はかない食欲で栄養を摂取しながら
ただ 西の空が赤く染まるのを待っている

夜光性の種族 夜に発行される暗号文書
独りでも独りじゃないさ なぁ兄弟 
星空に張りめぐらされた電子の蜘蛛の糸
ペンを持つ者 キーボードを叩く者 マウスを握る者
絵具にひたした筆はつよくしなやかに紙を往き
熱っぽい吐息でページをめくる彼女の
指には聖痕のように 黒と白と夢の染みが宿る

夜光性の種族 夜明けだよ ねんねの時間だ
彼らは名残惜しげに椅子を発って
スマホをつかんで駅前へ向かう
早朝から開く居酒屋
あたらしい空気の中で呑む寝酒の旨いこと
さくら肉の刺身を肴に梅割りをキュッと二杯
さあ 陽光で灰にされないうちにお帰り
ホコリと本と気に入りの毛布が待つ部屋へ
絶妙に散らかったあたたかな巣のもとへ

夜光性の種族 彼らにとって地球は
そう地球は まるで年がら年中クリスマスツリー
夜毎飾りつける 飾り続けてゆく
丹念に あざやかに 
かき続けてゆく 灼かれながら 焦がれながら


自由詩 夜に発光す Copyright 46U 2024-03-02 09:13:41
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