うみべのいのり
soft_machine

海硝子が集まる潮溜りがあるんだ
陽射をまといやわらかにおし寄せる汀
ひっくり返ったヨットを数え
貝殻なんかひろっていると
不意に気が遠ざかる

雨になれば走れなくなる白い電車が
通う島にも知り合いはいて
風にはためくイタリアの旗もあって
秘密めいた入江で夜ごと交わる
くじらとヘリコプター

何もかもはじめての物なのに
何故だろう、思い出に包まれている

それは、たぶんことばで見るから
赤い藻がゆれながら
空に浮かびつつある船も
短い命が
端正なパッセージで海辺にささげる祈り

あんなに拡がっているのに
すべて水なのに





自由詩 うみべのいのり Copyright soft_machine 2024-02-10 17:20:47
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