おいしい
soft_machine

モノクロームの映画が終われば
カーテンを揺らし
しみ込む雨
誰か好きなんじゃないかと
錯覚する痛み

もの哀しい風景の色には
限られた感情の両端があり
その中に無限を確かめることもでき

 乾し花越しに
 遠ざかる舟を眺めてた
 吸い殻越しに
 漕ぎ手の影と
 不確かな水平線が

 カウンター越しに
 スクリュー眺めてた
 空瓶越しに
 発光する水底から
 すき間に游ぶ鳥と泡と

どんなに願っても星にはなれない
何度目が覚めても
食が美味しい

まだ明るいけれど雨戸をたてる
ひとつ閉じれば
ひとつ開かれ
焼けた匂いに移りながら
煙も濡れながら昇る





自由詩 おいしい Copyright soft_machine 2024-02-09 10:51:08
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