あなた
303.com

優しい声
優しい冗談
優しい嘘
優しい笑顔
優しい気配り
優しい心

優しさは
私が決めるのです
あなたが
私を傷付けようとも
私が
そして私にとって
あなたの優しさは時々
とても悲しい

お金を稼ぐことが
生きることです
究極的には
愛なんていらない
憎みあいながらでも
生きることは尊く
死ぬまでは幸福なのです
あなたは
私に気が付かない

体が求めるのは心です
心は何も求めていないのに
あるべき姿でいるほど
嘘になる
それも仕方がないと
諦めるには
私は饒舌すぎます
舐めたことのない砂糖の味を
知っているのは
物乞いだけだから

傷付いた痛みを
本当に知っていることを
あなたは
知らない振りをする
晴れた日に
傘は差さない
いつかその時が来るのを
ただ
じっと待ち伏せている

優しさは
時に自分を損なうほどの
ひどい自惚れ
年老いていくわたしたちが
秋を迎える頃
実る世界を祝えたらいいのに
きっと
優しさは
わたしたちを崖から突き落とします

ごちそうと呼ばれる機会を
知らないわけでは
ないのですが
しばらく縁が無くて
それを目的に動くほどの
力もありませんし
正直言って
食事の仕方も忘れてしまいました

どうして
いつ死ぬのか
生きていることも
思い出せない
そんな人の
目じりに光る
涙の味が
どんな風に舌を刺すか
私は知ってしまったのです

はしたない思いをして
あなたを追いかけたくない
いやしい体で
恥をかかせたくない
色々なことがあるのです
生きているというのは

優しいあなた


自由詩 あなた Copyright 303.com 2024-02-04 14:02:33
notebook Home 戻る  過去 未来