虹が出るかもしれない
itukamitaniji

虹が出るかもしれない

大嫌いな数学の宿題もそっちのけで
雨を眺めていた 頬杖をついて
身体は確かにここにあるのに
心はどっかへ行ってしまったみたいだ

そう言えばあの日もこんな雨だったっけ
逃げ込んだ屋上で ふたり雨宿り
打ち明けてくれた君の夢の話は
とても眩しくて目を伏せてしまった

吹奏楽部の練習をBGMに
書き進めていく 物語はやけに
君との思い出ばかりを詰め込み過ぎて
何だか嫌気がさすけれど

君と居た日々が 普通の日々に
飲み込まれてしまわないように
私は今日もペンを走らせる
追いつかれないように 必死なの


チャイムの音でふと我に返った
独りの教室 静まり返って
懐かしい君の笑い声だけが
やけに頭ん中ずっと響いていた

言葉にすることさえずっと怖くて
胸にしまっていた 私の夢の話を
君だけは真面目な顔で聞いてくれて
そして少し笑ってくれた

君にもらった勇気だから
何よりも大切で 温かい
だからそれに恥じないように
私は私らしく生きなくちゃ

気がつけば雨も上がっていて
私は急いで 屋上へ駆け上がる
すごいスピードで雲が流れていく
私の未来みたい 予想なんて出来やしない

微かに空いた雲の隙間
虹が出るかもしれない


自由詩 虹が出るかもしれない Copyright itukamitaniji 2024-02-03 19:47:22
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