ジュリアン
リリー

 夜が来て
 刺すような凍をそそぐ星
 神秘めく 真冬のそらを征服する
 ビルの柱の蔭で

 一本の竜巻のように巻き上る
 子供の愛が
 大空を圧し馳ける

 懐かしい愛の歌をハミングする少年と
 広い海の歌をハミングする少女
 二人の声は
 近よせた唇と唇の間をころがり
 昼間薄よごれて見えるビルが
 妙に 荘厳な谷間で咲く
 ジュリアン

  愛し合った子供達は
  風に吹きすさばれて髪が舞い上り結ぼれているけれど
  その頬の 何と豊かな赤らみだろうか

 抱き合った胸と胸との間に
 もはや北風の吹きこむ隙もない
 瞳と瞳とに映る互いの影に
 歩む道の 遠さが
 測られはするけれど
 もはや近づけない距離ではない

 うっとりと二人だけで呼吸している
 お前達の すがすがしい抱擁、
 ジュリアンよ

  儚くとも熱く咲け!



自由詩 ジュリアン Copyright リリー 2024-02-03 09:58:29
notebook Home 戻る  過去 未来