姿見池
形代 律

姿見池には
何も映らない 別名は影見池

梅と詩文を愛惜したひとが
西へ行く路
水鏡を覗き
月に宛てて歌を呟いた

古代の風景は
異国のお伽話よりもわからない

ありもしない罪に濡れ
潔白を
月だけは理解してくれる筈 という優雅な叫びが
わずかな消息を伝える

想像は
鶯の鳴き声も聞こえない と嘆いて
流刑地で春を待ちわび
死んだあなたのすがたで途絶えるが

千年経った
神さまの位置の
あなたは

まだ苦しいだろうか
春を
あなたの知らない鳥が告げる
この世のこと


自由詩 姿見池 Copyright 形代 律 2024-02-03 09:09:06
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