回送バス 
リリー

 バスターミナルで
 ステップ降りるパンプスに
 纏いついてくる
 外気の 重み

 耳の端 掠める
 年明けの駅前で戯れている人達の談笑は 
 夜陰に白いレース開いた
 烏瓜の花

 終点の停留所から
 発車するバスの運転席に残った
 鈍色の影 
 を 見送って
 腕時計に目をやると
 さっきまでの居酒屋の賑わいから
 半時間ほどしか経っていない

 ハンドル握ったまま
 降りる客へボソリ と挨拶した
 無愛想な中年男性、
 顎の下に剃り残した髭が
 目に浮かんで消えた

 駅ビルのホテルの窓が煌めくほどに
 路面は黒々と沈み膚ざむい
 そんな短い 間に
 私の中で 
 魂が愛を求めていた


自由詩 回送バス  Copyright リリー 2024-01-21 15:21:07
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