二階席
リリー

 殊更に云うほどの事でもないが
 冷めたフライドポテトは
 不味い

 二人用テーブルで
 アイス珈琲になってしまった
 ホットドリンクカップを口へ運びながら
 今ここの この 
 いかばかりなる旅空
 高い梢の先に
 貫かれ ひょうひょうと鳴る 
 冬の心

 ぶ厚い硝子の壁で隔たれる
 いつもの駅前通りはモノクロームで
 サイレント映画の様

 ああ、私は大丈夫だろうか

 iPadキーボードを滑る指先に
 流れるものは
 蒼く張りつめた
 冬の気に
 きんきんとはねかえる
 細く鋭い 呻き

  我がおこないの行届かざりしを恥ず
  心は 強きにあらず
  ふとある時 瞬時に砕け散るにあらずや

 席を立ち
 「サンキューボックス」へ傾けるトレイから 
 素直になる心まで転がりおちて
 階段降りる 大馬鹿者よ
 
 



自由詩 二階席 Copyright リリー 2024-01-16 12:30:32
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