鼠径ヘルニアのこと
板谷みきょう

右の鼠径部からポコンと脱腸
加齢によって腹壁が弱くなったことと
立ち仕事が原因でしょうと言われ

「手術で最低でも四日間
入院が必要ですね。」

泌尿器科の医師の説明に
入院できないことを伝えると

「では、ウチでは
診れないですねぇ。」

これ以上は放置できないので
日帰り手術をする病院を探した
そうして
米国帰りの医師が
開業しているクリニックを見つけ
術式等の説明を受けて
手術日を決めてきた

午前中に点滴を始めた後
全身麻酔と局所麻酔をして
腹壁のヘルニア門に
メッシュを当て固定して終わり
傷口の縫合には糸を使わず
接着剤を使うので夕方までには
帰れると云う

そして

朝、目覚めた時から
飲み食いせずに
クリニックに行く
心配して妻が
付いて来てくれた

手術が終わり
回復室のベッドに横たわるが
麻酔が効いていて
下半身の感覚が無い

時折、若い看護婦が
入れ替わりで血圧を測り
具合の良し悪しを聞き
尿意や排尿の有無と
掛け布団の下の
傷口の状態を観察して帰る

何回か繰り返されている内に
麻酔の効果が切れてきて
感覚が戻ってきたのが解ると
傷口がどうなっているのかが
気になり、そっと
点滴をして無い方の腕を
鼠径部に這わせた

軽くガーゼが当てられてる

・・・で

ボクは
ビックリしてしまった

今までに無い程に
激しく
一物が怒張している

感覚の無い中
術後から今まで
ずっと、こんな
状態だったのか

そのあと
観察に来る看護婦さんに
その都度
「すいません」と
謝ったのは言うまでもない


自由詩 鼠径ヘルニアのこと Copyright 板谷みきょう 2024-01-08 16:25:13
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