思い出のがっちゃき二
板谷みきょう

当時、病院夜勤が
月に十回を超える勤務体制では
入院するだけの休暇が取れなくて
肛門科で切開して貰って
注入軟膏を挿していたが
排便の度に出血するのは
いつまで経っても
切開部位の創傷が
治癒しないからだった

もう手術しか無いと
覚悟を決めて
別の肛門科の専門病院へ行った

「何処で診て貰って
治療して貰ったの?!」
ボクの肛門を診て医師が言った

『入院できなかったので…』

「それにしても、コレは無いわ。
だって切っただけですよ。
痛いでしょぉ?」

そうして入院して
検査の後に手術日が決まった

気の弱いボクは
手術が
恐ろしくて恐ろしくて
こっそり
抗不安剤を沢山持ち込んでいた

手術前夜
病院から処方された薬の他に
持参した抗不安剤を
少し多めに服用した

気が付いたら
手術は終わっていた

通常手術後、病室に帰る時は
車椅子に乗って帰室するのを
ボクは
「大丈夫です。」と
歩いて帰室したという

全然、覚えてなかった
そして
点滴をする時にも
難癖を付けて酷かったと
看護婦長が話す

看護婦は誰もボクを看ない
すっかりボクは
肩身の狭い問題患者となり
担当は婦長さんだけだった

名誉挽回のつもりで
「実は…」と
床頭台の奥に隠していた
抗不安剤と入眠導入剤を
婦長さんに見せると
即、没収


術後の排便は
ウォシュレットの勢いを
最強ですること
三日目からのリハビリは
横臥で膝を曲げた後ろで
婦長さんが
「早くバナナのうんちを
出せるようにしましょうね。」と
ボクの肛門に指を入れる
それが
退院する日まで続いたのだ


自由詩 思い出のがっちゃき二 Copyright 板谷みきょう 2024-01-08 15:03:29
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