アテナイの学堂 ~Whitney Houstonに
カワグチタケシ

オープンキッチンの頭上に掲げられた
黒板に描かれた今日のメニューを端から読み上げ
アテナイの学堂の壁画を見上げて
床に降ろされたシャンデリアの
埃にまみれたキャンドル型の
電球が七色に輝いた時の
記憶を辿る

窓から石畳の広場に椅子を投げ
砕け散る決心
夢のはじまり

舞台下の奈落の円卓に並ぶ
アンティークの食器たち
夢の終わりに

真昼みたいな朝

半分透き通った身体は
半分透き通った精神を育む

ちょうどよさは瞬間の幻影
足りない者は増やしたがり
多過ぎる者は減らしたがる

旅の話を聞かせて

うまい話には裏がある
ひとりだけ騙されなかった男が
憧れを胸に抱いて
朝の海に漕ぎ出す

遠い目で見送りながら
純白のトーガをまとった女が歌う

世界がその歌を聞き逃すことはなかった
世界はその声を聞き流すことができなかった

人は生きている限り出会い続ける

それはそれとして存在し
空をほどいて
雲をほどいて

裸足で眠れ

 


自由詩 アテナイの学堂 ~Whitney Houstonに Copyright カワグチタケシ 2023-12-16 23:20:41
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