眺める
夏井椋也


ピントを甘くして
眉を和らげて
眺める

風ブレを気にしないで
意味を追い駆けないで
眺める

昨日までのわだかまりを
水鳥が曳いていく
明日からの気がかりが
湖畔の欅を越えていく

意識の可動域が広がって
芝生広場を一気に跨ぐ
感情の増幅率は均されて
秋の雲を静かに浮かべる

もう
どうでもいい

いろんなことが
どうでもよくなったら

レンズと言葉をリュックにしまって

また歩き出そう



自由詩 眺める Copyright 夏井椋也 2023-10-19 20:38:52
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