コネクト
由比良 倖
同じ世界の波の中、私たちは頭にいわゆる海を持っている、
それぞれが浮いて、果物みたいに、……新聞記事が沈み、
その記事の写真では政治家が失脚し、皮肉を書かれ、
けれど欄外には、割れた貝が虹色に散りばめられて、
悲しい笑顔が、段々天国の笑みみたいに見えてくる、
それを横目に渦巻く魚が泳いでいる、
天国はディスプレイに、その中の壁に金色のピンで刺し止められている、
私たちは頭を寄せ合って、内緒話をしている、いつだって、
喧噪の中ででも、みんな夢のプールの奥底で、遊んでる、
山の影で影踏みをする足音だって気にならない、
値踏みをしている灰色の手の平の裏は黄色く、
光り、微笑んでいて、透明な愛の唄が、
街の雑踏では指揮されている、多分そのとき
私だけが重ねて開かれた目蓋の裏に、
狂おしさを焼き付けている。
開かれた劇場みたいな私たちの街に、
街のために今日、陽は上がる、
私たちの海の果てから、
背後の影にまで、
同じ世界の波の中、陽は差して、
私たちは頭の中に海を持っていて……
(何かの影がよぎりかけた、
その予感に皆ふと顔を上げる……)
自由詩
コネクト
Copyright
由比良 倖
2023-10-09 21:25:52
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