願い
由比良 倖


寒い 君の隣りでも 僕は朝焼けを見ている
泣き虫な あなたが 怪我をしないよう
安定剤を 飲む 感情は痛いから
痛いから 宝物をうしなうから 予感がしてる
死の予感 僕はここにいないから たくさんの
愛の流れは 僕を避け ひとりきり
僕は死んでいく 寒い ちぎり取られたような朝焼けの中で
神だけが知っている 主人公格を奪い取られた
僕の 暗いピンクの暗色の 海の底での これからの生

涙が 流れてくるから 僕は告白しよう
僕はもう 死んでいるんだ 生きている ふりも上手に出来なくなった
僕はここにいない 僕は 墓場にいる
僕の墓場に もう ギターは無い ただそこにあるのは
枯れ草と、しなびて萎えて消えていく 僕の祈りと
君への 生の願い 脆さを抱えて生きていくことは楽だ
誰も もう覚えていないんだ あたたかい 人生なんて
半世紀前には 潰えてしまった 滅びてしまった

僕は僕の 命を捨てたい 誰もまだ 辿り着かない 藍色の
生の奥底では 全ての人の生が産まれ続けていて
何も知らずに生を営んでいる 君たちには君たちの
のっぴきならない人生があって 暗い吐息を 吐いてもいるのだろう
日ごとに僕の、笑みは乾いて 深い藍色の底で、
ひとりで ひとり、勝手に ひとりになってる いや、なれればいい



泣き虫な あなたが怪我をしないよう
祈るのが僕の仕事、、、、、、いいえ、それは嘘だ
僕は薬を飲み 安定剤を飲み
ただ自分のために 泣けようとすれば泣ける時間を
夜の間中 待っている

せっかくあなたの隣にいるのに
僕は君には関係なく 朝焼けに 崩れていく身体を
世界の崩壊の予感を 感じるばかりで

……

藍色の 詩集を編みました
手のひらに乗る ボールのような詩集です
君の手のひらの上で どうか転がしてください
僕の重さを 体温を
どうかあなたの手のひらで

……あなたの足で
どうか踏み付けてください


自由詩 願い Copyright 由比良 倖 2023-10-05 13:13:51
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